家族信託でも不動産を売却できないケースがあります|制度だけでは解決できない理由とは
- うるくす行政書士事務所

- 7月1日
- 読了時間: 4分

「家族信託をしておけば、将来は自由に家を売却できますよね?」
家族信託のご相談で、このようなご質問をいただくことがあります。
結論から言えば、
家族信託をしていても、不動産を売却できないケースはあります。
これは家族信託が悪い制度だからではありません。
むしろ、多くの場合は制度ではなく、不動産や権利関係の構造に原因があります。
今回は、実際に担当した案件をもとに、その理由を解説します。
ご相談内容
ご相談いただいたのは、認知症の診断を受けたお母様の将来を心配されていたご家族でした。
目的は、
将来施設へ入所した場合に備えること
必要になれば自宅を売却できるようにすること
売却代金を施設費用などに充てられるようにすること
でした。
家族信託を利用すれば、その準備ができると考えておられました。
調査すると「共有名義」という問題がありました
ご相談を受けて最初に確認したのは、不動産の登記事項証明書です。
すると、自宅はお母様だけの所有ではなく、
お母様と長女様との共有名義でした。
ここが大きなポイントになります。
家族信託で信託できるのは、
委託者本人が持っている持分だけです。
共有者の持分まで管理できるわけではありません。
家族信託だけでは売却できない理由
共有不動産を売却する場合は、
原則として共有者全員の協力が必要になります。
つまり、
お母様の持分を家族信託していても、
長女様の同意が得られなければ、
マンション全体を売却することはできません。
「家族信託=自由に売却できる制度」
というイメージを持たれる方も多いのですが、
実際にはそう単純ではありません。
大切なのは「制度」より「構造」
この案件では、
家族信託契約を作る前に、
次の点を一つずつ確認しました。
不動産の所有者は誰か
将来誰が意思決定をするのか
売却時に誰の同意が必要か
家族全体として合意形成できるか
こうした確認を行った上で、家族信託の内容を設計しました。
もし制度だけを優先して契約を作っていたら、
「信託したのに売却できない」
という結果になっていた可能性があります。
家族信託は万能ではありません
家族信託は非常に有効な制度ですが、
すべての問題を解決できるわけではありません。
例えば、
共有名義の不動産
借地権付き建物
抵当権などの担保権
土地と建物の所有者が異なるケース
などでは、
家族信託以外の検討も必要になることがあります。
制度を選ぶ前に、
現状を正確に把握することが欠かせません。
当事務所が重視していること
当事務所では、
ご相談をいただいた際に、
いきなり契約書を作成することはありません。
まず整理するのは、
権利関係
家族構成
お金の流れ
意思決定の流れ
将来想定される課題
です。
問題の構造を把握した上で、
家族信託が適しているのか、
他の制度も組み合わせるべきなのかを検討します。
まとめ
家族信託は、認知症対策や財産管理に非常に有効な制度です。
しかし、
「家族信託をしたから安心」ではありません。
共有名義などの権利関係によっては、
家族信託だけでは解決できないケースもあります。
大切なのは制度を導入することではなく、
将来起こり得る問題を整理し、そのご家族に合った仕組みを設計することです。
当事務所では、家族信託ありきではなく、権利関係や家族全体の状況を整理しながら、将来にわたって機能する仕組みづくりをご提案しています。
【ご相談について】
相続・家族信託・不動産・事業承継・共同事業など、関係者が複数いる案件では、
・誰が決めるのか
・誰が責任を負うのか
・お金はどこへ流れるのか
・出口はどうするのか
が整理されていないために、話が進まなくなることがあります。
当事務所では、契約書作成や手続の前に、案件全体の構造を整理し、関係者間の意思決定を支援しています。
「何から整理すれば良いかわからない」
「話し合いがまとまらない」
「手続の前に方向性を整理したい」
そのような場合は、お気軽にご相談ください。
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